シラセ@ブログ

元博士課程大学院生、今は新米社会人です。自立した研究者への転身を目指しています。大学院生の頃のことや、日々の生活で調べて見たこと・考えたことを書いていきます。


「大きな研究室か、小さな研究室か」問題はnatureにも取り上げられていた

ポスドク先となる研究室を選ぶときに「大きな研究室を選ぶか、それとも小さな研究室か」という問題は、natureでも記事が組まれていました。

www.nature.com

長い記事なので全てを紹介することはできませんが、エッセンスをここで掻い摘んでみます。 中盤以降の多くは過去にポスドクをされた方のインタビューや感想です。

とても短い要約

まず、ポスドクを志望する人が検討する問題の中で、「ビッグラボ(大きな研究室)か、スモールラボ(小さな研究室)か」は、殆どの場合において最初の悩み事である、とあります。 その答えについて、フランシス・クリック研究所のキャリアマネージャーの言葉を引用しています。

“It's quite a personal choice,”

つまり、正解や一般的な原理・原則はなくどちらが自分にとって良い方向に転ぶかを考えるのが良いだろうということです。

この後で、4つの切り口でそれぞれのメリット・デメリットを紹介しています。

Publishing Paradox

大きな研究室では、様々な研究が並行して進められているために、どうしても「ポスドク本人が望んだわけではない、部分的な貢献をした仕事が増える」傾向にあるとあります。 つまり、自分がファーストでもコレスポンディングオーサーでもない論文が多くなりがち、ということですね。

さらに、MITの91の生物系研究室を調査した結果が挙げられています。これによれば、大きな研究室は、平均的な研究室に比べて、トップジャーナル(Nature, Scienceなど)に論文を出版する傾向にあるとのこと。つまり、大きな研究室に所属することで、トップジャーナルに自分の名前を乗せることができる可能性が高まる、ということです。

一方、良くない点として、大きな研究室では一人当たりの論文出版数は減る傾向にあることだそうです。 以上をまとめると、大きな研究室は「みんなでホームランを狙いに行くが、個人の独立した仕事にはなりにくい」ということですね。

Valuable mentorship

ここでは、PIとのディスカッション時間のことについて触れられています。 それによれば、大きな研究室では必然的にPIが一人当たりに割くことのできる時間は減るとのこと。さらに、PIの時間のみならず、研究室内のリソースの奪いが発生しやすいとのことです。 確かに、これらの問題は小さな研究室では起こりにくいことは想像しやすいです。

Survive and thrive

ここでは、ポスドクの人が得る仕事のチャンスについて議論されています。 1点目に、大きな研究室にいると、それぞれが異なった手法やテーマで研究をしているため、それらの情報をお互いにシェアして新しいチャンスを得る可能性が高まるとのことです。

2点目に、前のセクションにあったように、大きな研究室ではPIが一人一人に割くことのできる時間は減ってしまいます。 したがって、(逆説的ではありますが)それぞれのポスドク主体的に独立して研究を進めるようになる、というインタビューが取り上げられています。

Real-world training

ここでは小さな研究室の強みが紹介されています。それは、小さな研究室は、ポスドク自身が研究室を構えた際のマネジメントなどの練習になることです。 研究費などを多数持っている大きな研究室から独立した場合、それらの研究費はほぼなくなってしまいます。そのような状況でショックをうける方が多いのだそう。

さらに、大きな研究室にいると、キャリア観がアカデミックよりに歪んだものになる、ともあります。なんだかちょっと分かるような気がしますね。

最後に

ここまで掻い摘んで見ましたが、最後は自分の性格などと照らし合わせて判断するしかなさそうです。 私自身、博士課程の研究室を選ぶ際はここまで考えてはいませんでした。 非常に参考になる記事でありつつ、今後自分が研究室を選ぶ際の悩みが増えそうです(苦笑)

それにしても、記事の紹介というのは難しいですね。。。

併せて、以前に書いたこちらの記事も読んでいただければ幸いです。

www.shirase-takaya.com